Nid20号掲載の裏話

昨日発売になった、Nid20号をたくさんのみなさんに読んでいただいて、感謝です。

表紙と、特集コーナーに4ページ、通販コーナーに2点の商品紹介と、盛りだくさんに紹介してもらいましたけど、実はこれは降って沸いたようなお話ではないんです。

Nidを発行する、エフジー武蔵さんとの出会いは昨年8月。
Nid17号に向けて、新商品を探しておられたエフジー武蔵の通販担当(当時)のGさん。
インターネットでわがこけし印鑑に出会い、電話で出品交渉を受けました。

こけし印鑑は、彫りを高根沢小斎氏に依頼していることもあって、手数料がかかる出品は難しい部分があります。Nidという雑誌も私たちは知らなかったこともあって、少し考えたのですが、これもご縁なんでしょうね。
やってみようかということになりました。

9月になってNid17号が発売になると、驚くほどたくさんのご注文が集り、エフジー武蔵さんも、もちろん私たちもびっくりでした!その注文は今でも継続しています。これは多分異例のことだと思います。

担当のGさんとは、お会いしたことはなかったんですが、どこか通じるところがあったようでずっと電話でお話を続けていました。

こけし印鑑もすっかり落ち着いてきた今年3月。あの大震災が起こりました。
そのときも何点かエフジー武蔵さんから受注を受けていたんです。

災害直後は、みなさんご存知の通り電話も電気も、携帯電話もほとんどつながりませんでした。
東京も電車が止まったり、大変な状況でした。

正確には覚えていないのですが、2,3日後、Gさんから携帯に電話をいただき、状況をお話しすることができました。仕事だけのお付き合いで、お会いしたこともない方からこんなときに応援の電話をいただけたことに心から感動したことを覚えています。注文を受けていた品が遅れることを話して、「僕たちは必ず復活します。そのときは復興のこけしをNidで出しましょう!」と約束して、電話を切りました。

僕達はその後、会津若松市の避難所生活を経て、現在の赤城山荘へ移住しました。
オーナーが理解のある方で、少しずつ仕事を始めることができて、受けていた注文はお届けすることができました。5月には編集部のKさんとTさんが、取材に来てくださいました。

それからエフジー武蔵さんとのお付き合いは深くなっていきました。4月末にはGさんからお見舞いの電話を頂き、約束の復興のこけしをやりましょう!という話を決め、生まれたのがNid20号61ページ右下の、「Nidオリジナルこけし」。
詳しくはこちら
http://www.nidnet.jp/nid_shop_vol20.html
Gさんとお話をして、すぐこれでいこう!と決まりました。そのコンセプトはこんなことです。

「今回のこけしは、『子持ちこけし』です。18センチの母こけしのおなかを開くと、かわいらしい7.5センチの子供こけしが顔を出します。Nidの『巣篭もり』という意味と通じることから、Nidオリジナルにぴったりだと思います。胸にはNidオリジナルのツバメの絵柄を描きました。(ちなみに赤城山からは、子持山という山が見えるんです。これも奇遇な縁のような気がします。)

私たち木地処さとうが、群馬県の赤城山で再スタートをした記念モデルです。母こけしは兄弟子の英之作、子供こけしは弟弟子の裕介作。兄弟での初めての合作を作りました。後継者不足に悩む伝統工芸の世界も、こんな兄弟もいるということが伝われば幸いです。

母こけしは、梅の花を多く描くことで、『春』を表現しました。この大震災で、日本は大きく被災し、冬の時期に似ていると感じたので、必ず暖かい春、明るい未来が来るということをあらわしたつもりです。子供は、美しい『赤城山の夕日』を表現したグラデーションこけしです。こけし工人と同時に画家でもある裕介氏ならではの作品となっています。」

つまりは震災のこと、自分達の再スタートのこと、いろいろな思いを込めた作品なのです。エフジー武蔵さんには本当に感謝しています。

そのほかにもいろいろなかたにお世話になっていますが、人が生きるうえで一番大切なのことは、人と人のつながりなんじゃないかと思うようになりました。お金は生きるうえでは必要な道具の一つですが、緊急時には役に立たないことがあります。でも、人のつながりは平和なときにはあまり目立ちませんけど、非常時にはこれ以上に心強いことはありません。
今回のNid20号の掲載も、そんな人と人のつながりが生んだものだと思っています。
そんなことを考えていただきながら、見ていただけたらうれしいです。

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